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アジアゾウのはな子2

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こどもの日

アジアゾウのはな子2

2018.11.27

我が動物人生

 はな子の獣舎は、確かに近代の新しい設備で飼育されている、他の動物園のゾウたちと比べると、明らかに解放感にかけ、コンクリート丸出しの獣舎で、いかにも人工物の象徴であり、見る人の感情を痛めつけるでしょう。しかし、実際には多くの野生種において、「この人工的な環境が大好きだ!!」という個体がたくさん飼育下(飼育されている動物)では現れます。

 ひょっとしたら、既に皆さんも経験しているかもしれませんね。例えば「飼われているインコや文鳥が、部屋の中で遊ばしていると自ら籠の中へ戻り寝る或いはくつろいでいる。また犬の繋留鎖が切れているのに犬小屋の中で寝ていた。晴れの日に子供が自分の部屋から出てこない」なんて言うのも、多くの場合が「この人工的な環境が大好きだ!!」という飼育下の野生動物の行動と、同じ作用の働きかけにより起きた現象です。

 要するに、人がイメージするほど人工物を動物たちは嫌っていないと言いたかったのです。それどころか、人が木や岩などを飼育スペースにレイアウトしてやったにもかかわらず、繁殖率が下がったり、予期せぬ怪我や事故を多発させることもあるのです。

 つまり飼われている動物からすると、木や岩をレイアウトしても、結局は人の目を楽しませることを前提とした人工物にすぎないのです。もし100%動物のためのレイアウトを本気でしたなら、3~5回は足を運ばなければヒョウを見ることができないとか、10回近く見に来たけど一度も見たことのないアルマジロ…。なんてことになってしまうでしょう。

 幸いゾウは人を大好きになってくれる動物なので、ものすごく手の込んだ森を飼育スペースに作ったとしても、人のいる方に頻繁にきて、愛嬌を振りまいてくれることでしょうが…。しかし、レイアウトを考えたスタッフからすると森に入らないゾウは、場合によりつまらない結果なのかもしれませんね。
6                   アフリカゾウと休憩する私。


嫌ならゾウは檻に入らない

 そしてこれが重要なのですが、たいていの動物園では、どんなに素晴らしい生態展示をしている場合であっても、夜間はコンクリートと鉄でできた無機質な狭い檻に入れます。しかしこれは悪いことではありませんね。良いことです。そうしなければいけませんね。狭い檻に入れるからケガや体調のチェックができるのです。フンの状態もすぐに確認できますね。特別に調合した餌や薬も与えやすいですね。それに保温も確実にできます。

 私は以前に狭くて見通しの悪い(故意に見通しを悪くしている)ケースの中でワニを飼っていました。それを一般の方が見学されたとき「なんと残酷な飼い方をしているのだ!恥を知れ!!!」と物凄いお叱りを受けましてね。しかし個別にされた動物は、食べた餌の量が確実にわかります。それに見通しが良いケースは人に都合がいいだけで、そもそもワニは人を見たくないのです。水の中にいる動物に薬をやる場合、餌に混ぜて与えることもありますが、水量に対して投薬することもあるので、個別に小さいケースで管理する方が状態良く保てます…。つまり野生の状態に近づけたように見える飼育設備の中で飼うことが、すべての動物にとって幸せに近付くわけではないということです。

 そして何より大事なのは今回の主役、ゾウさんたち。狭いコンクリートの檻の中、好きですね。だから毎日自ら入ってきます。ただ餌が置いてあるから入るわけではありませんよ。ゾウは途轍もなく頭がいいので、嫌なら入りません。断固として抵抗します。

 僕を含め、動物を擬人化したりイメージで接してはいけませんね。今回のはな子だけではないはずです。もっと多くの動物たちが人間の勝手なイメージにより、混乱するような扱いを受けているはずです。我々はたとえ少しずつでもそれに気づき、改善してゆかなくてはなりません。そのためにも我々人間の経験と研究が、動物園という知られざる秘境の門を開き、未来のため地球の生態系の保護・促進を導くことに関与し、生物多様性の一員として参加しようではありませんか!

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